福祉系の資格の中でも人気の高い社会福祉士は、取得しておくと役立つ国家資格です。
ただ、仕事内容についてはあまり詳しくわからないという人もいるでしょう。社会福祉士の仕事内容や将来性、給与、やりがいや向いてる人、向いてない人など、具体的に紹介します。
社会福祉士はどんな資格?
まずは、社会福祉士がどんな資格かについて、特徴や取得のメリット、他に比較されやすい資格などと合わせて見ていきましょう。
社会福祉士の特徴
ソーシャルワーカーとも呼ばれる社会福祉士は福祉関係の国家資格です。心身や経済的なハンディキャップを負った人からの相談に応じて、日常生活の問題を取り除くサポートをする役割を持っています。
高齢者の他、身体・知的障碍者、シングルマザーやシングルファーザーなど幅広い人からの相談に乗ることになり、高いコミュニケーション能力や対応力が求められる仕事です。
社会福祉士の資格を取得するには複数の進路があります。いずれも最終的には国家試験に合格する必要がありますが、福祉系の大学で指定科目を履修すればストレートに国家試験受験資格を得られます。
福祉系の短大で指定科目を履修した場合は、相談援助実務経験を経て国家試験受験資格を得られる仕組みです。
一般の大学や短大を卒業した場合や4年以上の相談援助実務経験がある人は、社会福祉士一般養成施設で1年の実務経験を積むと国家試験を受験できます。
他にも児童・身体障碍者・知的障碍者福祉司か査察指導員、老人福祉指導主事のいずれかを4年経験すると国家試験受験資格を得られるような制度もあります。
国家試験は年に1回2月に実施され筆記試験のみです。合格率は30%程度と国家資格としては難易度が低めの試験ですが、受験資格を得るまでに相当の勉強をしなければならないことを考えると妥当でしょう。
社会福祉士の資格を取得するメリット
社会福祉士の資格は国家資格であり、福祉系の業界では一目置かれます。相談に乗る対象が幅広いことから活躍の場の選択肢が広いのもメリットです。
困っている人の相談に多角的に乗ることができ、人生そのものをサポートできるシーンに常に直面することになります。日勤の仕事が中心で肉体労働や夜勤などは難しい人でも人の役に立つことができます。
社会福祉士と比較されやすい資格
社会福祉士に似た部分がある仕事に精神保健福祉士があります。精神保健福祉士は、精神障碍者とその家族から相談を受けてサポートする仕事です。
社会に参加するためのアドバイスをしたり具体的な手助けも行います。社会福祉士と比べると、サポートする対象が精神障碍者に限定されているのが特徴です。
社会福祉士と同じく国家資格で、受験資格を得るために福祉系の専門課程を履修してから実務研修を受けたり、一般の大学や短大を卒業してから養成施設で学ぶ必要があります。
社会福祉士の仕事内容は?
社会福祉士の資格を取得するとどんな仕事に就けるのか見ておきましょう。
資格があることで信頼につながる
社会福祉士は国家資格でありながら業務独占資格ではありません。社会福祉の相談業務は、実は社会福祉士の資格がなくてもできます。
しかし、資格を持っていることで相談をする人や家族からの信頼感が高まります。誰に相談すればいいかも明確になり、専門的な知識が深い人として頼ってもらえるでしょう。
勤務先によって呼び名も変わる
社会的に日常生活が困難な人の相談に乗るのが社会福祉士ですが、その別名はソーシャルワーカーです。
さらに働く場所によって呼び名が変わるのも特徴です。医療機関なら医療ソーシャルワーカー、児童相談所なら児童福祉士、老人福祉施設なら生活相談員などと呼ばれることもあります。いずれも業務の基本は相談業務です。
相談を受けて援助計画を提供する
勤務先が異なっても社会福祉士の基本的な業務は共通しています。勤務先の施設を利用している相談者から困っていることの相談を受けるのが第一歩です。
相談を受けたら、相談者がどうしたら生活を改善できるかの援助計画を立てます。その計画を提案して相談者に実行してもらえたら、定期的に評価や見直しを行うことも大切です。
さらに相談者が関係する行政や関係機関と連携して、公的な手続きの代行や支援情報を相談者やその家族に提供します。
相談を受けることも大きな役割
社会福祉士の仕事では相談を受けて具体的な改善策を提供することも重要ですが、ときには良い改善策がない場合もあります。
それでも相談者の話を聞いてあげることで、カウンセラー的な役割を果たせる可能性が出てきます。会話をすることで相談者との信頼関係が深まるうえに、相談者の自立心が芽生えることもあるのです。
社会福祉士の将来性
社会の格差がニュースなどで取り上げられることが増えてきましたが、実際には表面化してこない社会生活困難者が数多くいます。
全ての人が日常的に快適な社会生活を送るには、社会福祉士のように個人的に相談に乗ってあげる人が必要です。生活困難の問題は1人1人違います。AIが進化しても日によって変わる個別の細かい相談に的確に応じるのは難しいでしょう。
その点、人はいかようにも臨機応変に対応できます。社会福祉士としての経験が豊富であればあるほど対応力がついてくるはずです。将来的にもっと発展するべき職業といえます。
社会福祉士の1日の仕事の流れ
社会福祉士の1日は勤務先によっても多少異なります。例えば地域の福祉支援センターで勤務している社会福祉士の場合、勤務時間がシフト制になることもあります。
基本は日勤ながら夜間の相談も受けられるようにシフト制にしている支援センターもあるのです。内勤している間は相談者からの電話相談を受けたり、関係機関との調整連絡をとったりといった業務が中心となります。
公的書類の作成や相談者にとって必要な手続きを代行するのも業務の一部です。朝一番から外出して、相談者の家庭や介護施設などを訪問することもあります。
相談に乗る他、身体状況の確認なども行います。相談者や家族、役所の関連部署との打ち合わせに回ったり、出入りの激しい一日になることが多いです。
社会福祉士の大変なことや難しいこと
やりがいのある社会福祉士の仕事にも大変なことや苦労することなどがあります。どんな点が大変なのか紹介しておきます。
相談者の悩みを聞く責任
社会福祉士が相談を受ける内容は、経済的な問題もあれば子どものいじめや虐待の問題などもあります。
身体的な問題、精神的な問題、外出が困難といった問題なども社会福祉士が相談を受ける範囲です。社会生活を送るうえで生じる問題は百人百様で、訴え方も人によって様々です。
こうした問題の相談を受けるだけでも重くのしかかるものがあり、責任感のプレッシャーに押しつぶされそうになってしまうかもしれません。
具体的な生活改善につなげるのは大変
相談者から受けた相談を解決につなげるために具体的な改善策を提案したり手続きなどの手伝いをするのも社会福祉士の仕事です。
いってみれば、困ったことを解決する何でも屋さんに近い存在といってもよいでしょう。しかし、社会生活をスムーズに営めるように公的サービスを利用しようとしても、上手くいかないときもあります。
経済的に自立したい人を支援したくてもなかなか仕事が見つからないということもあります。そんなとき、具体的な生活改善につなげられないジレンマに悩むことがあるかもしれません。
相談者と公的機関との板挟みになりやすい
社会福祉士が社会的に困難な問題を抱えている人から受ける相談の内容は幅広く、明確に線引きできるとも限りません。
これに対して、相談者の社会生活を改善するために必要になる公的サービスには明確な線引きがされています。公的機関は多くの人に平等にサービスを提供するため、ルールに厳格で融通がきかない面もあります。
社会福祉士自身が公的機関に勤務しているケースも多いことから、相談者との板挟みになって矛盾を感じながらもとらざるを得ない対応があるでしょう。
矛盾を感じながらも、ていよくほかの施設に移ってもらえるように話しを進めると友人から何度も相談されています。引用:教えてgoo
このケースは、老人介護施設を運営する知人について語った社会福祉士の意見です。
全ての困難な人を支援したくても、介護レベルが高い人から順に支援する必要があると介護レベルが低い人には施設を移ってもらわなければならない事情が出てくることもあります。こうしたジレンマには、常に直面する可能性があるのが社会福祉士の仕事です。
社会福祉士のやりがいやどんな人に向いた仕事か
社会福祉士として働くやりがいはどんなことか、またどんな人に社会福祉士の仕事が向いているのか紹介します。
相談者から感謝される
社会福祉士は、相談者の役に立てれば感謝されます。様々な人に手を差し伸べる仕事でもあり、異なる種類の支援をすることも珍しくありません。感謝されることばかりではない中、相談者の役に立てて感謝されれば励みになるはずです。
長期的な対応だからこそ達成感も大きい
社会福祉士が相談される問題は短期間に解決できないこともあります。また、ある状況から抜け出せずに苦しんでいる相談者から何度も同じ相談をされることもあります。
相談者と長期的な人付き合いになることは多く、長いつきあいだからこそ相談者の問題を解決できたときの達成感は大きいでしょう。
社会福祉士に向いている人
社会福祉士は、幅広い問題を抱える人達の相談に乗って支援する役目を持っています。
話を聞くだけならいつでもできますが、具体的な支援をするには様々な困難を社会福祉士が共に乗り越えなければならないことも多いのです。
そうした苦労をしても相談者の役に立ってあげられないときもあります。それでも根気よく努力を続けることでステップアップしたり国際的な支援機関で働くようなチャンスも出てきます。
人の役に立つために地道な努力を惜しまない人、頑張ってステップアップしたい夢を持っている人も社会福祉士に向いています。
社会福祉士の給与は?
社会福祉士になるとどのくらいの収入を得られるのでしょうか。将来的な収入の見込みについても合わせて紹介します。
社会福祉士の年収、月収
社会福祉士には幅広い勤務先があるため、職場によって収入にも差が出てきます。とはいえ、福祉系の仕事の中では安定しているともいわれています。
公共機関で働くこともあり、順調に昇給できる期待も高いのがメリットです。例えば、初任給では月収15万~20万円程度の平均ながら、勤続10年で年収500万円ほどになることも夢ではありません。現場で介護の仕事をしている人などと比べると、昇給率は高いほうだといえます。
独立した場合の収入
意外と思われるかもしれませんが、独立して社会福祉士事務所を運営する人も増えてきています。相談支援や成年後見代行などの業務は後を絶たず、関連協会でも社会福祉士の独立を応援しています。
独立した場合の収入は雇用されるよりは安定しにくいかもしれません。しかし担当案件をつかみにくいという職業でもないため、成功できる確率は高いでしょう。
将来的に収入がアップしそうか
社会福祉士として雇用されている場合、昇給していける可能性は高いでしょう。
頑張ればステップアップしやすい仕事ですから、経験を積んで管理職を目指すのも収入アップの方法の一つです。公的機関と民間の施設では、どちらかといえば公的機関のほうが安定した収入を見込めそうです。
独立した場合は自分の頑張り次第です。1件1件の仕事を丁寧にこなし、実績を着実に積んでいくことで社会的な信頼をアップさせて次の仕事につなげていくことが収入アップにつながるでしょう。
日常生活が困難な人は大勢います。社会福祉士の仕事はいくらでもあるということです。どうやって収入につなげていくかは独立後の腕の見せ所です。
まとめ
人の役に立つ仕事として社会福祉士ほどわかりやすい仕事はありません。人の役に立つ仕事は他にもありますが、範囲が限定されている職業のほうが多いのです。
その点、困った問題を抱えている人の生活相談に乗って支援する社会福祉士は幅広い問題に対応します。どんなことができるかわからないけれど人の役に立つ仕事がしたいと思っている人にも社会福祉士は向いています。